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03 すれちがい

  最後の授業も終わり、私はクラスメイトに軽く挨拶を済ませてから教室を出た。
  校舎を出て、向かう先は第二剣道場。女子剣道部が毎日部活で使ってきた場所だ。
  午後は学校側が『戦争』の準備に忙しいため、今日は午前中だけで授業が終わった。部活も同じ理由でないため、私が今道場に向かっているのは部活のためではない。
  ただ、なんとなくだった。というより、いつもの癖で足が勝手に向かってしまっただけかもしれない。
  広い敷地内を歩くこと数分。たどり着いた道場には先客がいた。
「伊井原さん」
「あれ?部長さんも稽古かい?」
  伊井原そら。女子剣道部副部長であり、私の一番の親友である彼女は、まるで数キロ全力で走りきった後みたいに汗だくの格好で道場の中に立っていた。
「まさか伊井原さん、こんな日にも一人で稽古を?」
「こんな日だからこそ、とあたしは思うけどね。ま、さっき先生に見つかっちゃったから今止めるとこなんだけど」
  ちょっと待ってて、と言って彼女は更衣室へ消える。言われた通り少し待つと、制服姿に着替えた彼女が首にタオルをかけて、荷物を持って出てきた。相変わらず着替えの早い人だ。
「おまたせ!やー、それにしてもついに明日だと思うと緊張するねぇ」
「そうだね。伊井原さんはその……家族との挨拶はもう済ませたのか?」
「いやーまだまだ。今日帰ってからだよ。部長さんの方はどうなんだい?」
「うちは……家族はいないようなものだからな……」
「そっか…………」
  途切れる会話。よく喋る彼女が、こんな風に静かになったのは初めてかもしれない。
「おーい、トウザ!今日さ、皆で飯食いに行くんだけどお前はどうする?」
  少し遠くを歩いている男子生徒の声が、やけに大きく聞こえてくる。
「……あっちの男子は気楽そうで羨ましいねぇ」
  ポツリと、伊井原さんが呟いた。
「……別に、あの人たちはあの人たちで、色々思ってることもあるだろう」
「そりゃそうか。……あのさ、部長さん。ちょっと相談…いや、頼み?があるんだけど」
「何?」
 ぴたりと立ち止まり、真剣な目で伊井原さんは私を見る。
「明日さ、あたしと一緒に行動しない? あたしはアンタとは戦いたくないわけだし、だったらいっそ一緒にいた方がいいかなーって、思ったわけなんだけど」
 少しだけ早口でそう言って、伊井原さんは目をそらした。目線は地面を見下ろすでもなく、空を見上げるでもなく、ただ空中を彷徨っている。
「悪いけど……」
 私も彼女から目をそらして、校舎の壁を見つめているふりをした。
「……『戦争』中は、一人で行動するって決めてるから」
「ふぅん……」
 目線は相変わらず彷徨ったまま、伊井原さんはつまらなさそうに呟いて、それから急にいつものおちゃらけたような笑顔を浮かべた。
「残念だぁ。部長さんと一緒だったら、あたしの生存率もちっとは上がると思ったんだけどねぇ」
「別に、伊井原さんは私がいなくても十分強いだろう。なんといっても剣道部副部長だ」
「それを言ったら部長さんは部長じゃないか。おまけに、剣道の他にもいろいろ習ってるっていうし。まったく、本当、部長さんにはかなわないねぇ」
 あはは、と笑って、彼女は再び歩き出す。私も隣を歩いていく。
 校門の前まで、二人で冗談を言い合ったりして笑っていた。たぶん、一度にこんなに笑ったのは久し振りだ。
「それじゃあ、あたしはこっちだから」
 学校を出て最初の曲がり角。伊井原さんはそう言って私とは反対方向の道へと向かった。私も自分の家への帰り道を歩き出す。
「……明日から!お互い頑張ろう!」
 ふと振り返ると、彼女の背中がまだ見えていたので、私は大声でそう言ってみた。すると彼女はくるりと振り返って、両手を口に当てて大声で言い返してきた。
「もちろん! 絶対、あたしは生き残ってやるよ!」
 言い終わるとまたくるりと回って歩き出す。私も彼女に背を向けて歩き出した。
 これが私の、最後の日常。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 前回、梛木さんとこの逃覚くんが友達とキャッキャウフフしてたので、
 うちの湊にも親友とキャッキャウフフさせてみたよ、という話。
 ・・・・・いったいいつになったら湊はシリアスモードから抜け出せるんでしょうか(-_-;)

 あと、タイトル通り逃覚くんとすれちがってみました。
 本格的に絡むのはいつになるやら・・

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