「それでは、戦争開始前に最終確認を行います」
午前9時の少し前。体育館の中にマイクによって拡大された校長の声が響く。
わざわざ最終確認なんてしなくてもいいと思うんだけどなぁ。
「まずはルールの確認です」
『戦争』のルールは何年も前からずっと教えられてきたので忘れるはずがない。
その1。学校の敷地内から出ないこと。といっても、校門前や外壁には強固なバリケードが築かれているのでこれはほとんど不可能なことだ。ちなみにもしも敷地から一歩でも外に出ようものなら、強制的に即失格処分とされてしまう。
その2。基本的にはクラスや部活などに関係なく個人で戦うこと。まぁこれもほとんど意味のないルールだ。人との協力が禁止されているわけではないので、友達同士で同盟を組んで集団で戦うやつも珍しくない。というか私のように一人で戦おうとしている方が珍しい。
その3。戦争は参加者が一定の人数になるまで終わらない。今回は丁度1000人から始まり、100人にまで減らされることになっている。単純に考えれば生き残る確率は10分の1というわけだ。
まぁ、大体はこんな感じだ。他にも細々としたルールがあるのだが、開始前に小難しいことばかり考えていても仕方がないだろう。私のモットー『当たって砕け!』だ。
「ルールの確認はこれで以上です。ではこれより、戦争開始前の準備に移ります。1組の生徒から出席番号順に、別室にて武器と食料の受け渡しを行ってください」
いよいよだ。いよいよ『戦争』が開始される。
この『戦争』ではさっき校長が言ったように、一人に一つずつ武器と食料が渡される。
食料の方は約3日分。日持ちする缶詰とか、インスタント系の物が袋に入れて渡される。『戦争』が長引くようであれば、後に補給物資が配布されることになっているので、3日を過ぎても餓死するような事態にはならない。
そして、もう一方の武器の方は厄介なルールがある。なんと、渡される武器は皆平等……ではないのだ。拳銃を渡されるやつもいれば、ナイフを受け取るやつもいる。1000人が1000人に、それぞれ違った武器が与えられるのだそうだ。
ではどうやって渡される武器が決まるのかというと、恐ろしいことに『くじ引き』だという。今1組の生徒が向かっているように、別室でくじを引き、その紙に書かれた武器を貰うのだ。
何故そんなルールがあるのか。実はこれもまた『戦争』の一環で、重要な意味があるらしい。
そもそもこの『戦争』は、増えすぎた人口を減らすために行われるものだ。ならば残される人間は当然、より良い人間の方がいいだろう。そこで『戦争』の発案者はこう考えた。
『より強い者が、より頭の良い者が戦争を勝ち抜くだろう。だがそれだけではダメだ。より強運の者が生き残れば、この国の未来も彼らの強運によって良い方向へ導かれるだろう』
一言、発案者に申し出たい。
アホかぁ!!、と。
誰がどう考えても、馬鹿のその場の思いつきとしか思えないようなこの考えは、どうしたことか採用され今現在、「武器はくじ引きによって決定される」なんてルールが定められているのだ。
まったく・・・これからいったいどうなることやら、だ。
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